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ビジョンツアー 2008  〜 マダガスカル 〜

2008年9月12日〜23日 マダガスカル

ツアー概要

ビジョンツアー2008の目的地は、なんとアフリカのマダガスカル。大きくAチーム(9月12日〜19日)、Bチーム(9月15日〜23日)の2グループに分かれて、途中で参加メンバーがアンチラベという街に集合(約4時間)という相当にハードな行程のツアーとなった。仕事等の都合で数名のメンバーが参加できず、完全な全員集合はできなかったのは心残りだが、また、来年以降、真の全員でのツアーを実現したい。
 
経緯

まず、時間を1年前に戻そう。昨年のビジョンツアーの全員集合地であるポーランドのクラクフにて、メンバー満場一致で今回のマダガスカル行きが決定した。そもそも、マダガスカルが候補にあがっていたのは、メンバーに、現地で活躍されている日本人のドクターの知人がいらっしゃったこと、また、現地で日本人のシスターたちが病院、産院、学校などで活動されている、という話を聞いていたことなどがあり、何か私たちにお手伝いできることがないか、という思いが沸きおこっていたからだ。とはいいながら、実際に今回の訪問に行きつくには数々の試行錯誤があった。

そもそも、どういうルートで行くのか、1週間あまりで往復できるのか、というところからスタートだった(今回多くのメンバーはパリ経由、一部のメンバーがバンコク経由となった)。昨年までマダガスカルの総合病院に勤務されていた永井周子医師のご紹介により、マダガスカルに住まいを構えていらっしゃる東京外国語大学の深澤秀夫教授に現地の事情についてお伺いしたり、8月には運良く日本に一時帰国されていたマリアの宣教者フランシスコ修道会のシスター平間にメンバー全員でお話を伺ったり、という機会をもち、メンバーがそれぞれの問題意識をもち、出国となった。

今回の主な訪問先

1.アンチラベ

曽野綾子さんの小説「時の止まった赤ん坊」の舞台となった創立65年となるアベマリア産院へ。モデルとなったシスター遠藤は、残念なことに2006年12月に亡くなられたが、シスター牧野が今も引き続き活動されている。  
シスター牧野はやさしい笑顔が印象的な方で、魅力に魅かれた私たちはたくさん写真をとらせていただいたのだが、驚いたことにどのショットでも自然にやわらかく素敵な表情をされている。もちろんシスターは全くカメラなど意識されていない。現在75歳で、すでに16年間現地におられ、「私はもう定年になっているから自由(だからマダガスカルにやってきた)、ここに骨をうずめます」とおっしゃっていたのが心に残っている。
マダガスカルでは、頻繁に停電が起こるとのことで、ローソクの灯りでお産を行ったこともあるそうだ。現在、帝王切開のできる病棟を建築中であったが、停電に備えての自家発電装置がなく、不安を抱えておられた。
 
2.アンタナナリボ

マダガスカルの首都。病院、看護学校、複数の学校を運営されるシスター平間の活動を視察させていただいた。

(1)CLINOQUE ET MATERNITE
1913年に診療所を修道会が買い取り、はじめた病院。シスター平間が運営をされている。病院内においては、日本大使館をはじめ、各国から援助された医療器具などもあるが、古いものも多く、すでに修理の部品がなく、使用できなくなってしまったというものもある。また、ドクターがいないため、閉鎖されてしまっている科もあり、医療に最適な環境にはほど遠い状況である。
しかし、病院の床などは丁寧に清掃をされていたり、入院患者に毎日手作りのおやつを提供したりと、シスター平間が、心を込めて患者のためにできることをやろうされている想いがしっかりと浸透しているということが、はじめて伺った私たちにもひしひしと伝わってくる環境だった。きびきびと、かつ、温かくスタッフに指示されているシスター平間、そして、スタッフが母を見るような眼差しでシスター平間を見ているのも印象的だった。

(2)看護学校
病院と同じ敷地内に看護学校が併設されている。1学年約50人が3年制で学んでいる。ここを卒業することで資格を得て、看護師もしくは助産師として各地の病院などで働くことができるようになる。
学費は月あたり1,500円程度とのことだが、学費を払うことが困難で、ドロップアウトせざるを得ない状況になる生徒もいるそうだ。入学のための高い競争率を乗り越えても、経済的事情で学ぶことを断念せざるを得ないケースがある、という話は心が痛い。

(3)聖アントニオ学校(アンタナナリボ市内)
幼稚園〜高校まで、約2,000人の生徒が学んでいる。現在、新しくグランドを建設中だが、校舎とグランドは、田んぼや小さな川にさえぎられており、生徒たちがそこへ行くためには、大きく迂回する必要がある。
バスターミナルなどもあり交通量が多く、様々な人でにぎわい、危険性の高いエリアを通らなくてはならない状況だ。それを回避して、学校の敷地からグランドへ直接移動できるように、小さな川を横断できる橋ができればいいのに、というのが、シスターや先生方の想いだった。
今回、HRIでは、この橋とグランド脇にトイレを寄贈させていただくことにした。橋を通り、生徒たちが広いグランドで思い思いに走り回る日が待ち遠しい。そして、この橋が、子どもたちの夢を実現に導く"ビジョンブリッジ"となることを願う。

(4)聖アスンタ学院(アンタナナリボ郊外)
幼稚園から中学まで約670人が学んでいる。今年6月に新校舎が完成したということもあり、表面的には整っていたが、設備・備品などがまだまだ不足しているという現状があった。実際に教室や図書館などを見学して見ても、机や椅子、子どもたちが学ぶための本などが不足しているようだった。
校庭もでこぼこと荒れてきてしまっており、幼い子供たちにケガも起こっている、ということだった(現地は赤土で、風で土も舞うため、セメントで校庭を舗装するのが一般的である)。今回、HRIでは子供たちが学ぶ書籍や机・戸棚などの備品を寄贈させていただくことにした。

一部メンバーで行った箇所

(5)カンガルーケア イボンヌさん+永井周子医師
首都アンタナナリボの国立病院では、カンガルーケアを学び、ビジネスプランを持つイボンヌさんに、港町マジュンガの病院では、大阪からお越しの永井周子医師にお話を伺った。
カンガルーケアは定義が広い。日本のように母子の関係を良好にするもの、という概念ももちろんあるが、国によって状況によって違っている。
マダガスカルでのカンガルーケアは、未熟児や低出産体重児(10月10日で生まれているが、母親の胎盤の問題や栄養状態の問題で小さく生まれている)に焦点を当てている。
保育器に入れておいたほうが良い状態でも、マダガスカルの場合、保育器がない。あっても数が少なく高い。その場合、母親の胸の間でSkin to Skinの状態で過ごすことが良いといわれているが、永井先生は「何日からが実際にいいのか」「どんな問題があるのか」「どういう場合、マダガスカルの慣習で続けられなくなるのか」を統計的に調査されている。
実際に、現地でふつうに使われている布を用いて体験してみた。
「簡単に安価にできることで、劇的に死亡率を下げることができるなら、そんな良いことはない。カンガルーケアで、その効果をあげたい」とおっしゃる永井先生の言葉が力強かった。

(6)世界の医療団 メデュサン・ドゥ・モンド マダガスカル支部(以下MDM)
世界の医療団のマダガスカル支部コーディネーターであるティエリー氏。そして現地の囚人の健康および衛生状態を改善する活動をされている外科医師2名とお会いした。

マダガスカル支部での活動は大きく3つ。
1.台風でしばしば大災害を受ける地域があるので、予防と発生した時の対応
2.スマイル作戦(年に何回か、決まっている)
3.収容所の囚人に対する、健康・衛生状態の改善、そして人間の権利

収容所の状況は劣悪で、狭い部屋に20人が押し込まれ、夜には鍵をかけて閉じ込めるらしい。トイレなどは勿論なく、ボウルのようなものにするか、男性の場合だと壁に穴をあけて外に向けて、という状況もあるらしい。もちろん外側の壁は汚れ、非常に劣悪な環境だ。
そして囚人の方の中には、先進国のような「裁判」を受けておらず、投獄されてしまう人もいるらしいのだ。
ただ、それを国際的世論に訴えてしまうとMDM事態がマダガスカル政府から睨まれてしまう。なので時間がかかっても、まず政府に協力を訴え、毎月MDMの方が見回ることで支援したものが適切に使われているかのチェックから始めている。地道な、でもそれこそが本質的改善をもたらす活動だと感じた。

(7)JOCV(青年海外協力隊) AIDS啓蒙活動プロジェクト
2年間の任務でマダガスカルに赴任している井上真理子さん。17か月の滞在で、いまやマダガシー(マダガスカル語)をマスターし、現地の方々の懐に飛び込んでいる。
プロジェクトは、JICAの活動の下スタートしたのだが、昨年JICAの方針変更でお金がストップ。一時はもう閉めるか、というくらい厳しい状況に。
しかし、活動を絞りこみ、移動のための車もバスに変えて、地道に活動を続けてきた。今回、ある組織からの支援が決定し、財政面での苦労は少しおさまったようだが、まだまだ地元の方々の援助慣れの意識を変えていくことのむずかしさ、を感じている。
あくまでも、人道援助は国が自立するための一歩でなければかえって弊害が残る。こうした支援につきものの、アンチテーゼと闘っている。厳しい現実も受け入れて、ぜひ自分なりの支援ポリシーを創りあげていくことを応援したい。

今後の展開

今回、シスター平間、シスター牧野にお会いできたこと自体が私たちにとっては本当に印象深い出来事だった。お二人とも違った魅力をお持ちで、一言で表現させていただくならば、シスター牧野の"すべてを包み込んでしまうような温かさ"、シスター平間の"どんな逆境も笑い飛ばしてしまうような逞しさ"、というところであろうか。そして、お二人に共通するのは、院内でシスターを見つけるとスタッフや患者さんがすぐに笑顔で集まってくることだ。
メンバー一同、あらためて、シスター牧野、シスター平間に感謝の気持ちでいっぱいだ。

また、日程の都合上、一部のメンバーだけだったが、東京外国語大学の深澤秀夫教授、奥さまのフランソワーズさん、国立民族学博物館の飯田卓准教授、国立総合病院でカンガルーケアの研究をしている永井周子先生、マダガスカルでHIV撲滅活動をされているJOCVの井上真理子さん、母乳保育カンガルーケアを推進している岡山医療センターの臼井由行外科医師、世界の医療団でマダガスカルで活動されるティエリー氏、レユニオンから来て、マダガスカル収容所の囚人状況の改善に努めるフランス人医師のお二人、などマダガスカルに関連して活躍されている方々にもお話を伺うことができました。みなさん、マダガスカルの魅力に魅せられ、マダガスカルを愛してやまない方たちだった。

HRIの海外ソーシャル活動の2番目の拠点として選んだマダガスカル。私たちにできるのは、ごくごく小さな範囲のことだが、今後も、現地の方たちへの深い想いをもったシスターの活動、マダガスカルの未来を担う子供たちの夢を継続的にお手伝いしていきたい。

  • アンチラベAve Maria HospitalアンチラベAve Maria Hospital
  • 産院で生まれた子どもとシスター牧野産院で生まれた子どもとシスター牧野
  • 1階が病院、2階からが看護学校 1階が病院、2階からが看護学校
  • 集中治療室(ICU)集中治療室(ICU)
  • 修理できる人がいないため使われなくなった機材修理できる人がいないため
    使われなくなった機材
  • 看護学校の卒業生たち。非常に狭き門であり、かつ卒業も難しい看護学校の卒業生たち。
    非常に狭き門であり、かつ卒業も難しい
  • 看護学校の図書館。フランス語の本ばかり看護学校の図書館。フランス語の本ばかり
  • 校庭予定地を整えている人たち校庭予定地を整えている人たち
  • 校庭に行くまでに通らなければ行けない道校庭に行くまでに通らなければ行けない道
  • 校庭はシスター手づからセメントを埋めて補正したばかり校庭はシスター手づから
    セメントを埋めて補正したばかり
  • 学校の図書室。幼稚園から中学校まであるがこの大きさ学校の図書室。
    幼稚園から中学校まであるがこの大きさ
  • カンガルーケアを実践するひとカンガルーケアを実践するひと
  • ティエリー氏ティエリー氏
  • 指をさしている地域に大洪水が多発する指をさしている地域に大洪水が多発する
  • 海外青年協力隊の井上ゆみこさん海外青年協力隊の井上真理子さん
  • AIDS啓蒙活動のためのグッズAIDS啓蒙活動のためのグッズ

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