ビジョンハウス研修レポート 「シンギュラリティ時代の人材論」

2025/7/31

今回のテーマとゲスト

「 シンギュラリティ時代の人材論 」
  講師:ビジネス・ブレイクスルー大学 教授 川上 真史 様

弊社メンバーの学びの場である「社内勉強会(ビジョンハウス研修)」の内容を紹介します。毎回素晴らしいゲスト講師をお招きし、弊社メンバーだけでなく、このページをご覧の皆様にとっても学びや気づきを得る機会となることを願い、研修のポイントを公開しております。

2025年6月のビジョンハウス研修では、ビジネス・ブレイクスルー大学教授の川上真史様をお迎えし、「シンギュラリティ時代の人材論」についてご講演いただきました。DXの本質や人的資本経営、意味労働の重要性など、これからの時代に求められる人材像について深く学ぶ貴重な機会となりました。

 

講義内容

(ここからは、川上先生の講義を要約した内容となります。)

第1章:DXの誤解と本当のデジタル化とは

DXという言葉が日本で広まってから10年以上が経ちますが、いまだに多くの企業が「IT化=DX」と誤解しています。単に会議をZoomにしたり、ExcelをGoogleスプレッドシートにしただけでは意味がありません。私が訪問したある老舗企業では、「DX推進室」という看板を掲げながら、結局やっていることは経費精算システムのクラウド化だけ。経費精算が紙かクラウドかは、業務効率化の一部に過ぎません。本来のDXとは、「技術を通じてビジネスモデルを変える」「意思決定の質を変える」「価値の生み出し方を変える」という本質が問われています。ここに、人材開発や組織文化改革が直結しなければ、DXは絵に描いた餅です。特に日本は、技術導入と人材マネジメントが分断されがちです。

第2章:人的資本経営とESG、投資家が見ているもの

「人的資本経営」は単なるブームではありません。背景にあるのは、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の潮流です。機関投資家はもはや、財務諸表の数字だけでは投資判断をしません。人的資本は「人的資本開示指針」によって、雇用の安定性、育成の質、多様性の状況を問われます。しかし、日本企業の多くが「形だけの開示」にとどまっています。社員数、研修時間、女性管理職比率……これらを羅列しても、投資家が知りたいのは「それによって企業価値がどのように生まれるのか」というストーリーです。これから求められるのは、研修の回数や多様性の数値を示すことではなく、組織文化の変化、従業員の能力がどのように市場で価値を生むのか、という因果関係の可視化です。

第3章:日本の労働生産性を下げている本当の要因

私たちはなぜこれほど生産性が低いのか? 会議が多すぎる、決裁に時間がかかる、属人的で非効率……表面的にはこう語られますが、根底には「知識偏重の文化」があります。知識が価値を生む時代は終わりました。もはや、ググれば答えが出る時代です。さらに生成AIが普及し、検索ですらAIに任せる時代に入っています。「知っていること」を評価する文化、「知識を独占する人が偉い」という空気が根強く残っています。これが決裁スピードを遅らせ、会議を重くし、若手の挑戦を阻みます。

第4章:知識労働の終焉と意味労働の夜明け

では、私たちは知識が役に立たない時代に何をするのか。それが「意味労働」です。意味労働とは、「正解のない状況で、状況を解釈し、意味を与え、価値を生む仕事」です。これはAIには代替できません。例えば、営業職を考えてみてください。単に商品説明を暗記して話すだけならAIが代替します。しかし、顧客が言葉にしていないニーズを察知し、潜在課題を引き出し、組織内で調整して提案を形にする。この一連のプロセスは意味労働です。

第5章:意味を生む4つのキーワードを実践に落とす

前章で述べた4つの力を、もう少し具体的に掘り下げましょう。

意味を生む4つのキーワード

1

デジタルフルエンシー

AIを使いこなすだけでなく、「AIに何をさせるか」を設計できる人材が求められます。例えば、生成AIに企画書を書かせるだけではなく、そのアウトラインをどう指示するか、顧客の課題に即した要素をどう組み込むか。AIを道具にとどめず、共創相手とする発想がデジタルフルエンシーです。

 

2

ラーニングアジリティ

「学び直し」とは、古い知識を捨てる勇気です。中堅社員が陥りやすいのが「成功体験の罠」です。過去に通用した方法が、今は通用しないと気づけるか。ラーニングアジリティとは、柔軟に自分を更新し続ける力です。

 

3

コラボレーティブインテリジェンス

部門間連携、異業種連携、グローバル連携。異質性を受け入れるだけでなく、違いを力に変えられる人材が価値を生みます。多様性は管理するものではなく、共創の原材料です。

 

4

ジョブクラフティング

これは意味労働を自分事化する技術です。「自分はこの仕事のどこに面白さを感じるか?」「どうすれば自分の強みを活かせるか?」上司と対話しながら業務を自分仕様にリデザインすることで、エンゲージメントは大きく高まります。

第6章:ティール型組織の可能性と落とし穴

「ヒエラルキーのない組織」に憧れる企業は増えました。ただし、ティール型組織は放任ではありません。権限移譲と心理的安全性が伴わなければ、自己組織化は形骸化します。上司が放任するだけで責任は取らない、では現場は疲弊するだけです。

まとめ

最後に強調したいのは、「知識を超えた意味を編み出す力」は一朝一夕には育ちません。しかし、私たちには「学び続ける力」「繋がりを編み直す力」「過去を捨てる勇気」があります。生成AIという共創パートナーを得た今こそ、私たちは人間だからこそ生み出せる意味を問い直すべきだということです。

次のアクション

✔ 経営層は「何を知っているか」ではなく「何を生み出せるか」で人を評価する。

✔ マネージャーは部下に「意味を探す問い」を与える。

✔ 一人ひとりが「この仕事を10%でも自分のものにする工夫」をする。

✔ 組織全体が「生成AIの力を人間の意味労働に還元するフロー」を構築する。

おわりに

今回の講演を通じて、これからの時代に求められる人材像や組織のあり方について、改めて深く考える機会をいただきました。技術の進化が加速する中で、人間にしかできない「意味のある仕事」の価値がますます高まっていることを実感しています。変化を恐れず、柔軟に対応しながら、組織と個人が共に成長していくことがこれからの鍵だと感じました。

川上真史教授には、豊富な知見と熱意あふれるお話をいただき、心より感謝申し上げます。参加者一人ひとりが多くの気づきを得られたことと思います。今回の学びを活かし、今後の人材育成や組織改革にしっかりと取り組んでまいります。

 

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