2025/6/26

人事制度見直しの目的と人事制度の基本知識

人事制度の見直しは、企業が継続的に成長し、従業員の能力を最大限に活かすために欠かせない取り組みです。
本記事では、人事制度の再設計を検討している企業責任者や人事担当者に向けて、見直しの目的やポイント、タイミング、成功事例などを解説します。
ここからは、人事制度見直しの基本要素を整理しながら、企業が置かれた状況や社会を取り巻く環境に対応するための考え方を具体的に紹介していきます。

＜目次＞
人事制度を見直す目的と必要性
　なぜ人事制度の見直しが必要なのか
　人事制度を構成する3つの要素
　等級制度の役割と特徴
　評価制度の重要性
　報酬制度の設計ポイント

人事制度を見直す目的と必要性

まずは、人事制度を見直す背景と重要性について整理し、人事制度の意義を考えてみましょう。

人事制度は、従業員の活躍を促進し、企業の成長を後押しすると共に、企業が得た利益を、より多くの従業員が納得できるように分配する仕組みです。社会環境や経営方針が変化する中で、時代に合わない人事制度をそのまま維持していると、従業員の能力発揮や人材定着に支障をきたす可能性が高まります。また、報酬に不満を持ち、離職してしまうケースも珍しくありません。そのため、、従業員の活躍を後押し、時代に即した納得感のある報酬分配機能を果たすためには自社にあった人事制度を構築する事が重要なのです。

なぜ人事制度の見直しが必要なのか

また、人事制度の見直しは、その専門性の高さや、様々なステークホルダ―との調整難易度の高さから定期的に見直すことに抵抗を感じがちです。ですが、市場ニーズの変化や働き方改革などに対応するためには避けて通れないプロセスと言えそうです。

企業は事業環境の変化に応じて、組織形態や経営戦略を都度見直し、状況に応じて変化させていく必要があります。人事制度も同様に、変化を後押しするための仕組みとして、柔軟に見直す必要があるのです。例えば、新規事業や海外展開をする際に、従業員に求められる役割やスキルセットは変化します。現行の人事制度がその変化と整合しなくなった場合は、適切な評価と報酬設定が滞り、従業員のモチベーションが低下する恐れがあります。

さらに、見直しのタイミングを逃すと優秀な人材が流出してしまうリスクが高まります。企業が自ら人材の活躍をサポートできる仕組みを整えることが、人材獲得や定着率の向上につながります。

また、人事制度を変えずに企業だけが成長・拡大を続けると、評価基準やポジション設定の不備が生まれ、公平性や透明性が損なわれる懸念もあります。こうした問題を回避するため、人事制度見直しを定期的に実施することが、企業全体の健全な発展に欠かせないのです。

人事制度を構成する3つの要素

人事制度は大きく、等級制度・評価制度・報酬制度の3つで構成されると言われています。これらの要素は相互に連携しており、どれも欠かせない役割を担います。等級制度は、従業員が企業内でどのような立場や役割を担うかを明確化するもので、評価や報酬を決めるための基軸となるものです。評価制度は従業員の業務成果や行動をもとに決定し、これらの評価結果を基に個別従業員の報酬が決定されていきます。

ただし、企業の実情に合わせて重点を置くポイントは異なるため、各要素をうまく整合させながら設計・運用するかが成否を分けるでしょう。

等級制度の役割と特徴

等級制度とは、能力・役割・職務等に応じて従業員をグループ分けし、役割や責任範囲を明示する仕組みです。明確なキャリアパスが存在すると、従業員は組織で担いたいキャリア・役割のイメージを持つことができ、そこに向かって意欲を高めやすくなります。また、上司の立場で見ると、等級制度は部下育成等にも非常に役に立ちます。次の等級に向けて部下にどのような経験、指導を行うべきか、等級定義に照らしながら指導・育成することができます。

ただし、人員構成や組織規模によっては等級段階が多すぎる、あるいは曖昧になりすぎる場合があります。自社の人材要件と事業計画に合った階層設計を、定期的に点検することが大切です。

評価制度の役割と特徴

評価制度は、従業員の業務成果や行動を測り、組織内での価値発揮を適切に把握するための仕組みです。評価制度は、人事制度見直しの中でも特に複雑な部分で、成果の数値化が難しい場合、、他職種間での公平感をいかに維持するかが大きな課題となります。客観的な基準を細かく設定すると煩雑になる恐れもあるため、運用のしやすさと精度のバランスが重要です。

近年ではチームでの協働やプロジェクト型の働き方が増えてきたため、個人評価だけでなくチーム目標をどう評価に反映するか、公平な評価制度を構築するには、複数の評価者を設定し、評価プロセスや結果を従業員にフィードバックする仕組みをいかに整備するかなど、多面的な対策が欠かせません。

報酬制度の役割と特徴

報酬制度は、等級・評価結果等に応じて従業員の賃金を決定する仕組みを指します。企業が従業員の働きに報いるための重要な仕組みです。報酬制度には、基本給・手当・賞与・などが含まれ、その配分の仕方や支給条件は企業文化を形づくります。これらの各種報酬をどのように設定するかによって、その企業の人材に対する報い方が表れると共に、人材確保や定着に大きな影響が生じます。

報酬制度を見直す際には、公平性と柔軟性の両方を意識することが大切です。例えば、職種・等級の違いを適切に反映しつつ、成果や責任範囲に応じた変動要素を設けることで、優れたパフォーマンスを発揮した従業員へ適正に報いること等があげられるでしょう。