2018年ビジョンツアー「モンゴル」レポート
2018/4/6
左から江草、川村、稲増、虎谷、ハス、東(チンギスハーン広場にあるチンギスハーン像の前にて)
稲増、東、虎谷、川村、ハス、江草の6名は2018年3月25日(日)から28日(水)までモンゴル・オルス(以降「モンゴル」)の今を知る旅をしてきました。
25日(日) | 日本とベトナムからウランバートルに移動 |
26日(月) |
|
27日(火) | テルムーンテレルジゲルキャンプ |
28日(水) | カトリック修道会運営の幼稚園、小学校訪問 |
29日(木) | ウランバートルから香港に移動 |
辛亥革命(中国)、ロシア革命(ソ連)、第二次世界大戦(日本、ソ連)、文化大革命(中国)。この100年に起こった中国・ソ連による政治的混乱に巻き込まれながらも、たくましく、おおらかに今を生きるモンゴルから多くのことを学んだ5日間でした。
1日目(26日)は政治と経済。午前中に日本語教育を行う「モンゴル文化教育大学」を訪問し、牧原理事長から民主化直後のモンゴルと日本の関わりのほか、国内政治の現状を伺いました。
牧原理事長(大学の理事長室にて)
牧原理事長は中国・内モンゴル自治区の出身で、現在は日本に帰化されていますが、1960年代の文化大革命時に中国・共産党がモンゴル民族に行った粛清(10万人以上のモンゴル民族が虐殺されたとの報告もあります)を目の当たりにした経験者でもあります。
モンゴルでは1990年の民主化後、4年に1度、直接選挙が行われ国会議員が選ばれます。任期4年は日本の衆議院と同じ期間、かつ任期途中での解散がまだ行われていないことを考えれば大きな問題はありません。しかし、実際には政権政党が変わると公務員もすべて変わってしまうため、長期的な視点での政策を継続することが難しいことを知りました。
また、民主化後にソ連の関与が薄まる一方で、中国への依存度が急速に高まりました。モンゴルに進出する外国企業のうち約半数(約6,500社)が中国企業です。その多くは内モンゴル自治区出身、つまり同じモンゴル民族という事実はありますが、農作物の乏しいモンゴルの台所は中国からの輸入食材によって支えられているなど、国民生活に欠かせない存在となっています。一方で、中国企業が関連した国家事業ではモンゴルに不利な契約が結ばれることが少なくなく、健全なパートナーシップとは程遠い現状もあるようです。
テグシーCEO
こうした実態は、午後に訪問したTML(ペットボトルの容器、蓋を製造)からも垣間見ることができました。TMLは内モンゴル自治区出身のテグシー氏が15年前に設立した企業で、国内で流通するペットボトルの約7割を製造しています。
業績は極めて好調で、テグシーCEOは事業拡大への強い意欲を持っていましたが、「技術(者)不足」がボトルネックになっています。日本や欧米の優れた技術を希望していても、自力で人材を発掘する以外の方法がなく、結果として中国人人材に頼らざるを得ず、そのコストも割高とのことでした。 テグシーCEOはたまたま大学時代に起業したアパレル事業が成功し、ペットボトル製造設備への投資が可能だったから成功しただけで、あらゆるリスクを自分で背負うしかない。モンゴルではスタートアップ企業を支援する施策が現場まで行き届いていないのかもしれません。
チョロン理事長
ドロン学長
1日目の最後に訪れたのは100年以上の歴史のある国立商業経営大学です。私たちHRインスティテュートは、この大学を訪問した初の外国企業となりました。
国立商業経営大学校舎
アジアでトップ100に入ることを目標に、できる限りゴミや二酸化炭素を出さない「グリーンなキャンパス」を掲げ、学生同士が自由にディスカッションできる空間を設けるなど新たな挑戦を行っていました。
大学は政府から「産業創造」や「起業家育成」を期待されている立場にあります。チョロン理事長とドロン学長は日本の大学や企業との接点を持つことを強く希望されていましたが、具体的なネットワークがなく、政府からも支援があるようには見えませんでした。
お会いした方々の話を束ねると、横串を刺す機能が育っていないことがモンゴルの発展の妨げになっているように感じました。
2日目(27日)は、テルルジの国立自然公園内にあるキャンプ場でゲル(テント)での生活を体験しました。過去に時代の大きなうねりに巻き込まれながらも、民族の誇りを失わず、敵国である日本ですら包み込む懐の深さは、自然とともに生きてきた遊牧民の気質なのではないかと感じる時間でもありました。
ウランバートルからキャンプ場に向かう途中、オレンジ色の大地を貫く1本道を走る車の中で、中島みゆきさんの曲が似合う雄大さを味わいました。
シスター小島(写真右)と稲増
3日目(28日)は、サレジオ教会が運営する孤児院と職業訓練学校、幼稚園・小学校を訪問しました。福岡県出身で2009年からモンゴルに派遣されているシスター小島に教育や貧困の実情を伺いました。
モンゴルではストリートチルドレンが目立つような状況ではありませんが、今でも政府に保護された子供たちが孤児院に預けられています。宿泊施設も備えているため遠方で子供にしっかりした教育を受けさせることができない家庭にとっての最後の手段(ラスト・リゾート)になっています。
生徒の皆さんから歌で歓迎
また、モンゴルでは教育といえども1つの職業に過ぎず給料が高ければ学校を変わることが当たり前になっています。また、訪問した学校は教育意識が高い教会が運営しているため、結果として質の高い教育が実践されており、卒業生の就職率も高くなっています。
別の面で、モンゴルでは宗教法人が学校を運営することが認められていないため、シスターなどが所属するNGOが運営しています。加えて、NGOへの就業ビザの発行条件は年々厳しくなっているそうです。
5日間を振り返ると、今のモンゴルには仕組みをつくる人が足りていません。支援に積極的な中国は労働者も含めた事業を丸抱えするためモンゴルにノウハウが残りません。一方で、日本はノウハウや仕組みを伝導することに向いています。シニアの方々のセカンドライフも含めて、日本がモンゴルの発展に大きく貢献できるチャンスを感じました。
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