リクルートワークス研究所所長 奥本英宏氏に
「リクルート創業期を支えた人材・組織開発思想」を講演いただきました
2021/2/18
2020年11月30日(月) ビジョンハウス研修
講師:リクルートワークス研究所所長 奥本英宏氏
テーマ: 「リクルート創業期を支えた人材・組織開発思想」
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弊社メンバーの学びの場である「社内勉強会(ビジョンハウス研修)」の内容を紹介いたします。
毎回素晴らしいゲスト講師をお招きし、弊社メンバーだけでなく、このページをご覧になった皆様にとっても学びや気づきを得る機会となることを願い、研修のポイントを公開させていただいております。
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今回は、リクルートグループで人事・組織領域に従事され、株式会社リクルートマネジメントソリューションズの社長を経て、2020年に株式会社リクルート リクルートワークス研究所所長に就任された、奥本英宏氏に登壇いただきました。
弊社の重要なパートナーであるリクルートマネジメントソリューションズをはじめ、リクルートグループ企業と協業する機会の多い弊社メンバーであっても、初めて聞く内容、知っていた情報のより深いところにある本質に触れられる内容が多く、改めてリクルートの凄さを感じる時間となりました。
(ここからは、奥本氏の発言を要約した内容となります。)
1.テーマ設定の背景
現在のリクルートは、これまでの事業の中核であった、リボンモデルに代表される需要と供給のマッチングから、SaaSのようなプラットフォームビジネスを展開するDX企業へと大きく事業転換を図ろうとする過渡期にある。
1960年の創業以来、人と組織にこだわってきたリクルートが「これから何を変えていくべきなのか」を考えるために、改めてリクルートが何を大切にしてきた組織なのかを考察し、研究する機会を持った。リクルートの歴史を遡っていく過程で、経営者の言葉が膨大に残っている組織だったことを知ることができた。
本日は、リクルートの研究を通して得た成果を、この場で紹介することで、皆さんが人や組織を考える参考としていただきたい。
2.創業時から「普遍的かつユニークな心理学的経営」を目指す
リクルートの創業メンバーの江副と大沢には心理学出身という共通点があり、当時の最先端であったA.マズローの自己実現(「人間性の心理学」は1954年発刊)の概念にも通じていたと思われ、当初から人の可能性を信じ、「人を最大の資産」とする経営を目指していた。この経営思想は、現在のリクルートにも受け継がれるものであり、リクルートという組織は、こうした普遍性を60年も磨き続けてきた稀有な存在でもある。
3.管理と統制に抗い、自律と統制を基盤とした人・組織づくり
一般的な企業は、個人の多様化や環境の複雑化に伴うカオスのコストを管理と統制によって秩序づけようと努めるが、創業期のリクルートはこうした考えに抗い、個人の高い活力を維持し続けられる人・組織にこだわった。
具体的には、「自己組織化(=自律的に秩序を持つ構造をつくること)」を基本思想とした、「個人の内発的動機」と「組織の環境適応」を両立、最大化するマネジメントである。
4.「自己組織化」を促す人・組織マネジメント
「自己組織化」のためのマネジメントは、「意図的なカオスの創成」、「自律的な個の発現」、「あるがままの個の受容」の3つの柱で構成される。
(1)「意図的なカオスの創成」
江副は組織の硬直化を非常に嫌い、変化に対してポジティブであることを求めた。不均衡や不安定な状態が活性化につながることを理解し、意図的に“ゆらぎ”を生み出すことを好んだ。大沢も曖昧そのものを経営ポリシーにしているところがあり、あえて不均衡な状態をつくることで、そこから均衡を図ろうとする個人の努力を促したのである。
江副は「脱・管理」と発し、大沢は「自由な風土」を大切にした。リクルートは、ルールや制度を最小限にとどめている。
「ヘテロ(異質性の高い組織)化」という言葉が飛び交い、異質性が高いことを強み、同質性が高いことを弱みととらえていた。
今でもリクルートの人事制度は至ってシンプルで、価値観の幅を広げるために新卒中心の組織は目指しておらず、かなり早い段階から中途採用で女性を積極的に採用した。
(2)「自律的な個の発現」
「自己決定」と「自己責任」と「自己実現」を3点セットにして、個人の活力を引き出す。
裁量権を与えて個人に選択させ、コミットさせる(自己で責任を持たせる)と仕事が面白くなってきて、自分を出したくなる(自己実現につながる)。
早い段階から自己完結型の仕事を与え、企画からサイクルを回す経験を積ませる。マルチプルな仕事に従事させることも、本人のストレッチにつながり、成長の伸びしろが生まれる。
個人の責任を重くする一方で、失敗への寛容さも重視する。失敗したこと自体は責めずに、原因追及に時間を割き、トコトン議論する。
また、どんな社員でも最新の経営情報に触れられるようにしている。社内報がいくつかあるが、「かもめ」や「週刊リクルート」には経営層の言葉が多数収録されている。
江副は意図や背景をなるべく言葉で共有することに努めた。リクルート社内で一番嫌われるのが「Howだけを語ること」。Howの中身以前にWhy(背景)が語られないことへの不満が多く、逆にWhyに納得ができればHowはすんなり納得したりもする。
(3)「あるがままの個の受容」
リクルートでは個人間に差があることを重視する。これは個と個の間がどれだけ離れているか、という意味で、単なる個性の尊重とは異なる。
1968年に、リクルートが新卒採用を始めることになった際、「経営の3原則」を作った。そこでは、「われわれは各個人の欲求動機を尊重する。」と明記されており、「つねに社員の自主性を期待する。」、「社員に対する画一的・全体主義的・権威主義的な人事管理は行わない。」、「われわれは個人尊重の理想実現のために、その障害となる諸行為を排除する。」といった具体的な内容まで盛り込まれている。
また、江副は「ゲゼルシャフト(利益共同体)化していく組織に対して、ゲマインシャフト(精神共同体)的な側面を決して弱めない」と明言している。一例を挙げると、リクルートでは喜びを分かち合う時に、何かを配ることがよく見られていて、現在もウィンドブレーカーなどをよく配っている。
加えて、「人格は才能より優先する」という言葉の通り、人間形成に時間やコストをかける。人に時間を割くことを「是」とする社風があり、一見するとムダと思われるようなことであっても個人の尊重にはしっかり投資する会社でもある。
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講演をお聞きした後は、メンバーからの質疑に答えていただき、理解をより深めることができました。この度は、貴重な機会をありがとうございました。
記:コンサルタント 虎谷 秀信
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