ベトナムダナン進出 日本人インタービュー第2回(前半)〜IFV 柳田様〜

2016/5/2
筆者:松岡 泰子
 
今回も、弊社と同じダナンソフトウェアパークに入っていらっしゃるIT企業をインタービュー。 今回はIFVの柳田社長にご協力いただきました!

 

IFV Co.,Ltd. General Director 柳田 敏 様 (インタビュー日;2015年11月19日(木))

 

会社概要

 

松岡)まずは、御社の概要をお聞かせください。

 

・会社名; IF Vietnam Co.,Ltd.(http://if-vietnam.com) ・設立年;2012年(創業2011年。法人登記2012年。) ・業務内容;企業様の広告販促=Webサイト、アプリ、デジタルパンフレット制作など。  クライアントは、車メーカー、飲料メーカー、化粧品メーカーなどで100%日系のメーカー企業。  (日本国内企業80%、ベトナム国内日系企業10%、シンガポール・バンコク内日系企業10%) ・従業員;現在約50名。柳田さん以外は、すべてベトナム人。

 

柳田社長

 

ダナン進出の背景

松岡)なぜダナン進出をされたのですか?

 

僕は、日本では広告代理店のインターネット制作事業部で20年近く仕事をしてきました。新しい形としてベトナムと日本の連携型をやってみたいなと思って、独立したんです。初めは独資で友人と立ち上げましたが、もともと勤めていた会社から面白いから一緒にやろうという声をもらって、今は一部出資してもらっています。 なぜダナンだったかには、2つの理由があります。先行者になれることと、環境がいいことです。 そもそも、独立したら海外でやろうと思っていました。いろんな国と都市を回りましたが、大都市、ベトナムならホーチミン・ハノイですが、そういうところは、すでにある程度いい日系IT会社が入っているんですよね。もう先行者にはなれない。一方、当時のダナンはまだまだでした。空港も(今は新しくキレイになっていますが)古くて、昨日爆撃うけたのか?(笑)っていうくらいの感じだったし、日本人もまだ100人いるかいないか。日本人に会うことさえ難しいような時でしたから、今から先行者としてやるならここかな、と思ったんです。それが1つ目の理由です。 2つ目として、環境がいいこと。人間、仕事するならいい環境のほうがいいのは当たり前じゃないですか。シリコンバレーみたいなことです。。ITのベンチャー企業って結構海に近いところに多いですよね。日本なら鎌倉とか湘南とか。ハノイ・ホーチミンは東南アジアの魅力である熱気はあるんですが、本物の自然などの生活環境の視点に立つと、ダナンがとびぬけて良かったんですね。ダナンは沿岸都市ですから、日本の湘南やアメリカのロサンゼルスなんかとイメージが重なりました。

 
 

松岡)ベトナムという国に対しての思いは何かありますか?

 

僕はベトナムに縁もゆかりもないんで、なんでベトナムに住んでるんだっけ?って年に1回くらい思うんですけど(笑)。司馬遼太郎の「人間の集団について〜ベトナムから考える」っていう本があるんです。その中で、お箸を使う文化というのは、中国が起源で、中国・日本・韓国・ベトナムだけだってことが書いてありまして。今のメディア的には、ASEAN・東南アジアっていう括りでベトナムが捉えられますが、司馬遼太郎さん的にいうと、中国を兄貴として、日本・ベトナム・韓国が弟達(あるいは親戚)みたいなものだと。僕もその通りだなと思いました。 日本はこれからどこかの国と仲良くやっていかなければ未来がないという状態の中で、どことパートナーシップ組むの?って考えますよね。その時に、良い悪いではなくて、物理的な距離とか、文化の違いによる問題って必ず付きまとうわけです。でも、超えられない、というか、別に無理して超える必要はないことだと思うんですよね。超えなくても済むパートナーを選べばいいんです。“ベトナムあるある”もたくさんありますけど(笑)、ベトナムと日本はベストパートナーになると思います。だから、両者にとって発展的な関係を築いていけたら、という意識は持っていますね。

 

創業してからの歩み

松岡)実際に創業してからの様子を聞かせてください。

 

最初スタートしたときは、工業団地の中に間借りする形で、従業員が5人くらいでした。僕が、教育・マネジメント・進行管理を全部をやってましたね。4年が経った今では、僕がやるのは主にマネジャーに対する教育の部分。実務はベトナム人スタッフ(ナショナルスタッフ)にやってもらっています。日本のお客様には日本語で、シンガポール・バンコクのお客様には英語で、スタッフが直接やりとりしていますから、9割は僕が関わらなくても大丈夫な状態になっています。

 

松岡)では、スタッフみなさんが語学堪能!?

 

うちのスタッフの平均年齢は約25歳。若いんですよね。ベトナムの平均年齢が若いから当然なんですが。で、25歳の人材に能力を2つも3つも求めるのは無理じゃないですか。だから、うちではエンジニア、デザイナー、語学担当など、役割を分担してそれぞれ置いてやっているんです。外国語大学を出たような人材に外国語のコミュニケーションを担当してもらっています。つまり、制作しているスタッフと、お客様とやりとりするスタッフは別ってことですね。

 

松岡)初めからそういうやり方をとられていたのですか?

 

はい。日本の広告業界って、体力も能力も命けずるヤツが強いみたいな、そういう感じなんですよね。自分も1週間家に帰らないなんて、別に珍しい話ではなかったですし。でも、それをそのまま、ここに移植しても将来がないなと思いました。一人でいろんなスキルを身に着けて少人数でやりきるというやり方ではなく、専門性のあるメンバーが、広く集って一つの仕事をやろうと。日本の“社畜感”(笑)を移植しないでやりたいと思ってました。だから初めから分担制なんです。

 

松岡)実際にダナン生活を始められて、その魅力は期待通りでしたか?

 

そうですね。やっぱりハノイ・ホーチミンってのは、すごい熱気があって、ベトナム全土から、やってやろう!という意志の強い人が集まっている。「世界を見てるゼ」という感覚もあります。ここダナンはそういうのが薄いので、もどかしく感じることもあるんですが、逆に中部の人の穏やかな人間性とかは、一緒に働くメンバーとしてよかったと思うんです。うちのスタッフもみんなダナンがNo.1っていいます。中部をすごく愛しているというのを感じますよね。実は、今後ホーチミンにも展開していくんですが、あくまでもダナンが本社というスタンスにしています。そのくらい気に入っていますよ。

 

松岡)ダナンはIT都市って宣言していますが、実情はどうなんでしょうか?

 
 

※出典;Danang IT Park Website

 

進出するにあたって、2011年の初旬に4回くらいダナンに通いました。丁度その年にダナン政府が「ダナン市はITに力を入れていく」って言ったんですよね。ベトナム政府の発表は鵜呑みにしちゃいかんってことを当時は知らなかったので(笑)、これは運命だ!!と思ったものです。でも最近では、うちが入っているダナンソフトウェアパークのビルは満室状態だし、誘致したいっていってもどこに?って感じはありますよね。市長意見交換会の時には日本商工会として意見しておきましたけど。 IT企業にとっては人材不足も、正直大きな課題ですね。教育って速攻性がないので、十分な人材が育つまで時間がかかります。現状では「こういう人材がいたら、こういう仕事がとれるのに(とれない)」ということも沢山出てきています。でも、文句をいっても仕方ないので、人材が育ってくるのを待ちながら、今の人材でできる仕事でクライアントにアプローチしていくことで何とかやっている感じです。例えば、スキルaがある人材×10人いれば、プロジェクトAが取れる。でも今はスキルbの人材しかいない。なら、今はスキルbの仕事でお客さんを探しに行くってことですね。そうしながらスキルaを持つ人材が育つのを待っています。 最近は、ダナンの日系企業間でヘッドハンティングが行われてトラブルになるということも出てきています。これは業種関係ないです。日系企業が進出してくればくるほど、後発の企業は失敗しないように賃金を高めに設定します。当然、いい人材は高い給料の会社に移っていくという構図ができます。これはダナンに限らずよくある話ですし、労働者の自由を奪うわけにもいかないので、仕方ないことなんですが、なんせダナンというのは小さい街ですからね。取り合うんじゃなくて、全体として良い方向にもっていきたいとは思っています。(※柳田さんはダナン商工会の事務局もなさっています。)

 

松岡)今後の御社のビジョンはどう描かれていますか?

 

もっと拡大します!1年で100〜150人増を目標。ホーチミンに営業所を出すことは決まりました。ベトナム国内の仕事を増やしたいと思っています。 今は単価が安いので、正直あまり儲からなくて苦しいです。でも今やっておかないとベトナム=「安いだけ」の価値から次のステージに行けない。あと3年で日本の技術をもっと移植して、安くなくても日本からも仕事がくるような力をつけたいですね。ベトナムも含めASEANの経済が明るくなるように、今は儲からない仕事でも、そのうち利益が出てくるように。そんな世の中の流れを念頭に置きながら、ASEAN展開も考えてはいます。

 

>>>後半に続く

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