人事制度の改定で「自分で考える組織」にアップデートする~大阪特殊合金株式会社
2025/12/26

(取材協力)
大阪特殊合金株式会社
取締役 宮脇康介様
人事部 係長 白井佑亮様
昭和36年に大阪で創業し、日本の基幹産業を足元で支える企業として鋳鉄用の球状化剤・接種剤・添加剤をはじめとする各種合金の製造・販売を行なう大阪特殊合金株式会社。2023年から1年半かけてHRインスティテュート(以下、HRI)とともに実施した「人事制度改革」の内容、刷新プロセス、新制度に込めた想いについて、取締役の宮脇康介様と人事部係長の白井佑亮様に、HRIチーフコンサルタントの酒井瑛司も参加する形で伺いました。
■「合金」は鉄の製造に欠かせない調味料
――最初に御社の事業内容についてお聞かせください。
宮脇 社名にあるように「合金」の製造・販売が、私たちのメインの事業になります。私たちが手がける「合金」の多くが鉄の特性を最適化するために添加される材料です。「合金」と聞いてもイメージしづらいかとは思いますが、料理における調味料のように、ごく少量を加えることで素材を変化させることができます。たとえば、耐久性が求められる自動車のエンジンやブレーキに使われる部品に私たちの「合金」を添加することで、強度を高めたり、耐摩耗性、加工性などの性能を大きく向上させることができます。

白井 日本で製造されている車であれば、当社の合金がほぼどこかしらに使われていますし、他に身近なものとしては、スマートフォンの差込端子、鍋やフライパン、マンホールの蓋などにも合金が使われています。
酒井 私もコンサルタントとしてお手伝いするまで「合金」についての知識はあまりなかったのですが、たとえば、全体の数%の合金を加えることで鉄の強度が飛躍的にアップするそうです。お客様が使用する素材の種類、求める強度はまちまちなため、現在提供している合金は数千種類、取引先は国外を含めて800社以上とお聞きしています。
■理想は「評価シートが白紙の人事制度」
――今回、人事制度の改革を行なうにあたり、なぜHRIに依頼されたのでしょうか。
酒井 きっかけについては私のほうからお話ししたほうがいいかもしれません。実は最初にご依頼いただいたのは「管理職研修」でした。研修を実施する際にご要望等をお聞きするうちに、「管理職を育成するのであれば、制度も更新したほうがいいのではないか」と感じるようになったので、僭越ながらその旨お伝えさせていただきました。
宮脇 実は私自身、これまでの人事制度に限界を感じており、制度を刷新したいと考えていましたので、タイミングよくご提案いただいた形です。以前、HRIの研修を受けたことがあり、HRIの掲げるミッションである「主体性を挽き出す」は、当社の組織、人材に関する考え方と相性がいいと感じていたため、お願いすることにしました。
――新しい人事制度をつくるにあたって、どのような点を大切にして進められたのでしょうか。
宮脇 私自身としては、会社側が評価の「枠」を決めてしまうと、どうしてもその枠内で考えて、行動してしまうことになり、それでは主体性が発揮されないのではないかという問題意識を常にもっていました。ですので、最初に私が酒井さんにお伝えしたのは「私の理想は評価シートが白紙の制度です」というメッセージでした。「白紙」というのは評価基準をなくすという意味ではなく、「自由記述」ということであり、自らの仕事や価値を自分の言葉で説明できる人材を育てたいという比喩的な表現です。
酒井 人事制度を刷新していく際には、核となるビジョンが大切になりますので、宮脇取締役の理想とする組織像を軸にしながら、経営陣の方々へのヒアリングを重ねていきました。その結果、「従業員のみなさんが自分で考えて、行動して、実現する組織」という方向性が見えてきたのです。
白井 方向性が決まったあとは、具体的な仕組みとして、等級制度、評価制度、報酬制度の三本柱の改革に着手しました。たとえば、主体的に考えて動いてもらえるように、これまで存在していた総合職、一般職という枠組みを撤廃し、等級についても従来型の「年齢」をベースに考えるのではなく、「役割」と紐づけるなど、試行錯誤しながら一つずつ形にしていきました。
酒井 私が印象に残っているのは、報酬制度を考える際に、宮脇取締役が「給与が下がる人はゼロにしたい」とおっしゃったことです。通常は人件費の上限が決まっているケースが多く、その範囲でメリハリをつけるのがスタンダードな手法ですが、今回はあえてそのようなアプローチは取りませんでした。
宮脇 これは製造業ならではの考え方かもしれません。「製造」においては、新しい技術や製品を開発することも大切ですが、日々の現場業務の中心は「高い品質のものを同じようにつくり続ける」ことであり、その前提があって初めてお客様に信頼していただけます。しかし、そうした業務は評価されづらい傾向にあるため、新しい報酬制度ではしっかりと評価したいと考えました。

■全従業員120人と面談を重ねて、新制度に込めた想いを伝える
――新しい制度を導入していく際、従業員の方々にはどのように周知していったのでしょうか。
白井 宮脇がお伝えしたとおり、「給与が下がる人をゼロにする」方針だったとはいえ、制度が変更になることに不安を感じている従業員が一人もいなかったわけではありません。そのため、酒井さんと一緒に、従業員一人ひとりと面談して、新制度の概要に加え、実際の給与の額についても個別具体的に提示しながら丁寧に説明しました。
酒井 120名いらっしゃる従業員全員との面談というのは、私も経験したことがない規模でした。今振り返って思うのは、これまでの会社の歴史、制度を否定するのではなく、時代に合わせてアップデートしていくという方針に加えて、「自分で考える組織」にしたいという会社側の明確な意図があったことが、多くの従業員の方の共感を呼んだということです。

――人事制度を刷新したことによる効果についてはいかがでしょうか。
宮脇 まだまだ新制度がスタートしたばかりですので、本当の効果はこれからだとは思いますが、いわゆる「年功序列」ではなく、がんばりに応じて等級がアップする形にしたことで、リーダーを志す若手の数が増えてきていると感じています。当社はシニア層と30代以下の従業員の数は比較的多い一方、40代が相対的に少ないため、今回の改革をきっかけに、30代以下の次世代リーダー層が増えることで、技術等の継承も図っていきたいと考えています。
白井 人事の視点で目に見える効果を感じたのは、「採用競争力」が格段にアップしたことです。実はもともと当社の給与水準は決して低くなかったのですが、基本給に加える「手当」が充実していたため、外部から見たときにわかりづらいという課題がありました。その点、今回の人事制度の刷新で給与についてもクリアーになり、就職や転職活動中の方々に伝わりやすい給与体系になったことが、応募者の増加につながったと考えています。
■理想とする組織に向けて、アップデートを続ける
――今回の人事制度の改定をきっかけに、今後はどのように組織をアップデートさせていくご予定でしょうか。
宮脇 「自分たちで考えて、自分たちで決めて、自分たちで動く組織」という理想と比べると、まだまだギャップがあります。ものづくりと同様に、組織づくりにおいても自分たちにフィットした形に試行錯誤と改善を続けていきたいと思います。
白井 人事としても「制度を変えたからあとは自走してください」というのでは無責任ですので、今回の人事制度の改定と併せて、マネジメントポリシーのようなものを同時に作り始めているところです。そのポリシーも、一つひとつのアクションに対して「こうしなさい」と枠をはめるのではなく、日々の活動を後押しするような内容になるよう心がけています。

――最後に、HRIとの取り組みを振り返って感じられていること、今後HRIに期待することをお聞かせください。
白井 今回のプロジェクトでは私が一番酒井さんとご一緒する時間が長かったのですが、「コンサルタントとしての正解」を当てはめるのではなく、当社の目指す方向性をしっかりと把握したうえで、ご提案いただけたのはありがたかったですね。コンサルタントとしてのスキルや成果物のクオリティの高さは言うまでもありませんが、どんな些細なことでも相談にのってくださったり、他社の方が見たら当社の従業員と間違えるくらいの全力のコミットメントをいつも心強く感じています。
宮脇 今回のご縁に感謝するとともに、まだまだ改革は道半ばですので、引き続きご支援いただければ幸いです。
酒井 私としましても、貴社が理想とする組織を実現できるまでご一緒したいと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
(了)
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