企業理念を体現するリーダーが「未来」を拓く
——株式会社ポーラ・オルビスホールディングス様

2020/1/25

POLAやORBIS、THREEなど化粧品ブランドを展開するグループの持株会社であるポーラ・オルビスホールディングスは、2007年からHRインスティテュート(以下、HRI)のワークアウト®手法に基づいた次世代リーダー育成プログラムを導入しています。その背景や実践方法、組織にもたらされた効果について、HR室の山本史織様と中嶋直希様にお話を伺いました。

(取材協力)
(左から)
株式会社ポーラ・オルビスホールディングス HR室 課長 山本史織 様
株式会社ポーラ・オルビスホールディングス HR室 中嶋直希 様

 

社名株式会社ポーラ・オルビスホールディングス
事業化粧品事業を中心としたポーラ・オルビスグループ全体の経営管理
設立2006年(創業1929年)

顧客ニーズの多様化に応えるマルチブランド戦略へ……多彩なリーダー育成が課題に

—HRIのカリキュラムを導入されたきっかけは?

 

山本史織 様(以下、山本):当社は2006年に持株会社として設立されました。それまで実質的にPOLAブランドを中心として化粧品の研究開発・販売を行ってきましたが、市場が変化し、お客様のニーズも多様化する中で、グループ内に多彩な複数のブランドを保有するグループ体制へと移行しました。それぞれターゲット層やコンセプト、価格帯も異なる様々なブランドを展開するうえで、各ブランドを牽引する経営的視点を持った個性ある人材を育成しなくてはなりません。

 

そういった背景から、2005年に立ち上げたのが「未来研究会」という次世代リーダー育成塾です。スタート時は若手から中堅クラスまで20名以上を集め、座学研修をはじめとしたMBA的なカリキュラムを行なっていました。けれども、社会環境変化のスピードが加速する中で、我々自身のビジネスもより一層変革しつづけることが求められます。人材育成も従来型の座学研修では対応しきれなくなってきたのです。そこで、2007年にまずスポット的に依頼させていただいたのが、HRIさんでした。狩野さんといろいろとお話させていただく中で、より実践的な内容で、ディスカッションしながら新規事業や経営課題について考えていこう、という形になりました。

 

同じく2007年からは受講対象者をより拡大し、入社5〜10年目の若手社員を中心とした「未来研究会」に加え、係長や課長など中間管理職を対象にした「経営幹部養成講座(2018年度よりビジネス変革塾に名称を変更)」をスタート。2013年には役員層を対象とした「組織変革コーチング」をはじめました。未来研究会とビジネス変革塾で次世代リーダーを育成しつつ、それを育む組織風土を作るために役員にもコーチングを行い、世代や役職の異なるレイヤーごとに次世代リーダーを生み出す仕組み作りを進めてきました。

 

—今回は若手向けの「未来研究会」にフォーカスしてお話を伺います。研修に際して、貴社が抱えていた課題はどのようなものでしたか。

 

中嶋直希 様(以下、中嶋):特に若手社員は、日々の業務の中で、「与えられた課題」に対して解決する機会はたくさんあります。けれども、自らありたい姿を思考し、現状に問いを立て、課題化、解決する力は、なかなか鍛えられません。まず、じっくり考える機会がないのです。また、俯瞰して考えるという意味では、会社や部署を横断したプロジェクトもありますが、所属する事業会社や部門で完結することも多く、日々の業務をこなすことが、仕事の目的となってしまうこともあります。

 

山本:若手社員にとって、まずは任された仕事に精一杯取り組み、成果を出すというのが基本であることは確か。ただ、その次のフェーズへ向かうとき、そこから脱却しなくてはなりません。現場に近いからこそ、そこで自分なりに現状を解釈し、目的意識を持って、自律的な仕事を行う必要があります。

 

中嶋:次世代リーダーとして、育成したい力は大きく3つ挙げられます。まずは、「課題発見力」。自分の美意識やアイデンティティから発せられる価値観を大切にしながら、前例や当たり前に「問いを立てる・現状を認識する」ことが重要です。次に、「課題解決力」。ただの「妄想」に終わらせるのではなく、果たして今、この課題を解決することでどのようなインパクトをもたらすのか、コンテクストを明らかにしつつ、ロジックの裏付けを踏まえて真因を炙りだす力です。そして3つ目は「多様性を活かすリーダーシップ」。自分自身、あるいは自分の所属する部署では正解だったとしても、さまざまなバックボーンを持った人が集まる中では、それが正解とは限らない。「さまざまな価値観や意見がある」ということを理解したうえで、自分がチームの中でどんな役割を引き受け、能力を発揮すれば、チームのパフォーマンスが上がるのかを考えて行動することです。

「感受性のスイッチを全開にする」……企業理念をカリキュラムに体現

—研修はどのように行われているのでしょうか。

 

中嶋:若手社員から自選他薦問わず希望者を募り、そこから15名前後が、メンバーとして参加します。昨年度は9カ月間の日程で、以下のようなカリキュラムを行いました。

 

中嶋:当社のミッションは「感受性のスイッチを全開にする」というものなのですが、まさにそれを具現化するためのカリキュラムになっています。受講生と同世代ながら、世界で活躍するアーティストや、課題解決のために会社を興した創業社長を招聘するなど、世の中に価値を届けている人が立てた問いやものの見方を、ご本人から直接学びます。また絵画などの芸術作品を題材とした「対話型鑑賞(アート・ワークショップ)」は、自分が絶対だと思っていたものの見方が、実は数あるうちのひとつに過ぎないことを実感できる、独自性の高い内容です。

 

山本:特に当社らしいのは、変革プランを「起承転結」に結びつけているところです。「起承転結」というのは、(代表取締役)社長の鈴木(郷史様)もよく話す言葉なのですが、単純にストーリー展開のことを指すのではなく、ビジネス戦略や思考プロセス、コミュニケーションなどあらゆることに関連づけられます。感受性を高めて、ほかの誰よりも早く気づき、問いを立てる力(起)。現在の問題の背景を一旦受容し、歴史から変化を押さえる力(承)。論理的な裏づけから現状に対し、将来を見据えて変えるべきことを見立てる力(転)。そしてそのビジョンを実現するために周りや環境を動かす力(結)。このプロセスによって組織変革のプランニングを行います。

 

—受講者の反応はいかがですか。

 

中嶋:多くの受講者は当初、ある種自信を持ってカリキュラムに臨むわけですが、自分にはない視点や経験、専門性、バックグラウンドを持って成果をあげてきた人たちと出会って、見事に「鼻を折られる」形になります。それを乗り越えようと、真剣に自分と向きあいます。この研修で得た経験が、これからの彼らにとって、難しい課題へアタックするときに立ち返ることができる「ベース・キャンプ」となるのです。

 

山本:日常業務を離れて、グループ全体としての視点を持ちながら、暗黙知や共通言語が通用しない中で、これまで考えたことのない課題に取り組む。ショック療法ではありますが、結果として視座が上がっていますね。

 

—コンサルタントの働きぶりはいかがですか。

 

山本:狩野さんは「講師」というより、「伴走者」ですね。個性もバラバラの人が集まってチームを作る中で、さまざまな葛藤をフォローして、細やかなフィードバックをくださいます。世の中の流れを読み取り、問題の本質はどこにあるのか考え続けなければならない中で、狩野さんがうまく視点や切り口を投げかけてくれて、ようやくメンバーたちも動き出せるんです。

 

中嶋:当社のことを深く理解していただいたうえで、その時々の課題に応じてカリキュラムをカスタマイズしてくださいますし、時には受講者自身の悩みを受けて、オンタイムでテーマを変えることもあるんです。私たちが本当に求めている情報をもらえますし、臨機応変に内容を変えることで、螺旋階段のように受講生を高い視座へ引き上げてくださいます。

 

山本:まさに当社の理想とする働き方、あり方を体現されていて、先端テクノロジーから社会学、アートなど知見の幅広さに、いつも知的好奇心を刺激されます。メンバーたちも本当に信頼していて、「憧れの人」みたいな感じなんです。

 

「若手でも会社を変えられる」組織変革への実感を

—研修の中で具体化した「変革プラン」はありますか。

 

中嶋:直近では、2016年に提案された「グループFA制度」が2017年に実現しました。また、同年に新しい化粧品ブランドが提案されましたが、こちらも検討のフェーズに入っています。

 

—研修を導入してから現れた効果はありますか。

 

山本:導入してからもう10年以上経ちますが、未来研究会やビジネス変革塾を修了した幹部が誕生しはじめています。修了者の中には30代でグループ会社の社長や部門長を務める人が増えています。また、ビジネス変革塾を受講した課長が部下を未来研究会へ送り出したり、コーチングを受けた幹部が自部門の課長をビジネス変革塾へ送り出したり……バトンを繋ぐような形で、組織としてこれまでのものを抜本的に見直し、新しいものを生み出すイノベーティブな風土が少しずつ育まれてきています。

 

―これからどんなふうにカリキュラムを推進していきたいですか。

 

中嶋:この研修会の名前は「未来勉強会」ではなく「未来“研究”会」です。研究とは、先人の叡智をしっかり学びながら、新たな発見を求めることだと考えています。受講生には教科書を読むだけではなく、自ら教科書をつくるくらいの気持ちで、会社の「当たり前」に問いを立て、考え、行動して欲しいと伝えています。ただ、変革はひとりだけの力では成し遂げられません。事務局として、受講生が現場へ戻ったとき、周囲を巻き込んで変えていけるような環境づくりをサポートしていきたいです。

 

たとえば、未来研究会の卒業生はグループ全体で200名を超えています。このネットワークを上手に活かせれば、より多くの挑戦が生まれるはず。また、他業種で活躍する同世代のメンバーと交流することで、更に研修の学びを深められると考えています。この記事を読んで興味を持たれた方は、ぜひHRIさんを通じて、お声掛けいただきたいですね(笑)

 

山本:若手からもっとグループ全体が変わるような提案が生まれるといいな、と思います。そして、「自分たちでも会社を変えられるんだ」というリアリティを生み出していきたい。学びを通じて、次への一歩を踏み出すための力を身につけてもらいたいです。

(右から)
株式会社ポーラ・オルビスホールディングス HR室 課長 山本史織 様
株式会社ポーラ・オルビスホールディングス HR室 中嶋直希 様
株式会社HR インスティテュート 取締役 シニアコンサルタント 狩野尚史

 

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