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「どう働くか」は「どう生きるか」——学生たちが持つべき「キャリアの羅針盤」
—HRインスティテュート

2018/3/15

HRインスティテュート(以下、HRI)では、企業や団体だけではなく、学生や若手社会人に対してもキャリア支援プログラムを提供しています。まだ社会経験の浅い彼らにとって、「どう働くか」だけではなく「どう生きるか」を内省し、さまざまな経験を通して思いを共有することが、自らの価値観を明確化するきっかけとなっています。今回は、プログラム策定・運営に携わるHRIコンサルタントの塚田泰弘、東耕平の両名が、そこに込められた思いを語ります。

 

(取材協力)
(左) コンサルタント
塚田泰弘

(右) コンサルタント
東耕平

 

株式会社HRインスティテュート
社名株式会社HRインスティテュート
事業ビジネスコンサルティング&研修プログラムの企画・開発・実施
設立1993年

「“就活支援”なんて、意味がない」? 学生の“嘆き”からはじまったプログラム

-学生キャリア支援プログラム「Life Design Camp」を立ち上げたきっかけは?

 

:もともと、私個人の問題意識として、学生や若手社会人の育成に取り組んでいきたいという思いがありました。そこで年に一度、「今年のビジョンを考えよう」という名目で、20〜30名くらい集まって、飲みながら大いに語らいあう、ということをやってきました。そういったつながりで、私が支援している学生団体の学生が、ある時Facebookで「就活支援のサービスなんて、意味がない!」と書きこんでいたんです。彼女は、いわゆる有名大学に通っていて、ずっと親に言われた通りに勉強して、「いい子」に育ってきた。そこで就活が始まって、ESの書き方、グループワーク、面接の方法……など、「テクニック」ばかりを教わって、それを実行していくのだけれど、果たしてそんなことに意味があるのか? と疑問を持ったというのです。そこで私がコメント欄に「じゃあ、どんな就活支援なら意味があるのか、を自分たちで考えてみたら?」と提案すると、即「やりたい!」と。そこで、学生有志とともに「学生たち自身がキャリアを考えるためのプログラム」を作ることにしました。2016年2月から私を中心に検討を始め、より専門的な観点から具体的にプランを詰めていこう、ということで、キャリアコンサルタントの国家資格を持つ塚田に2016年10月から協力してもらうようになった形です。

 

 

-学生たちは自身のキャリア観に対して、どんな課題を抱えているのでしょうか。

 

塚田:プログラムに参加してもらったのは大学2〜4年生と学年が異なっているので、それぞれの課題の解像度も違いますが、就活以前に、そもそも何を仕事にしたいのか、どんなことにワクワクするのか、あまり明確になっていない人がほとんどでした。また、学生だけでなく社会人1、2年目の子にもオブザーバーとして参加してもらったのですが、彼らですら、そこが明確になっていない。むしろ、「働きはじめて、悩みがさらに深まった」と、涙を流すくらい悩んでいる子もいた。そこで、しっかり内省しながら、「働き方」だけでなく「生き方」を考えよう、という方向性を立てたんです。

 

学生たちに必要な「リアルなロールモデル」と「働くことへの内省」

-プログラムのコンセプトはどのように決まったのでしょうか。

 

:我々と学生有志と話し合うなかで、まず、参加者だけでなく運営側自身も成長できるように、継続的に取り組んでいく仕組み作りをしました。そして今、どんな状況に置かれ、何を求め、何をやるべきなのかをしっかり明確にしました。そもそも、現代は終身雇用制が崩壊し、一つの組織の中だけで生きていくのではなく、本業とは別の「2枚目の名刺」を持ったり、パラレルキャリアを選んだり、という働き方が現実のものとなりつつあります。そこで重要なのは、「誰かに何かを言われてやる」のではなく、「自分の軸・価値観を持ったうえで選び取る」生き方です。

 

塚田:そこで、プログラムでは「①キャリアデザインワークショップ」「②人生の先輩トークセッション」「③職業体験〜農業〜」の三本柱を組み立てました。①のワークショップでは、生まれてから小学、中学、高校、大学と進んできたなかで、どういった経験をし、その時にどんな感情を持ったか……というふうに「人生の棚卸」をしてもらい、そこに表れる人生観を深掘りします。そして未来へ向かって、何をやりたいのか(Will)、何をやるべきか(Must)、何ができるのか(Can)を明確にするため、②のトークセッション、③の職業体験と組み合わせました。

 

 

塚田:Will・Must・Canは、世の中を知り、社会や企業から何を求められているのか、外部から刺激を得なければわかりません。そこでトークセッションには、それぞれまったく異なるキャリアを持つ4名を「人生の先輩」として呼びました。

 

:まず、次世代の就農者育成に取り組む「農継者」代表の菅沼祐介さん。彼は東京農大出身で、山梨で雪害が起こった際に単身でボランティアへ行き、大手酒造メーカーの内定を蹴って、甲府で農業をはじめた人です。そして、富原麗美さん。ぐるなびの広報などを経て、現在はスマートロック「Akerun」を展開するフォトシンスでコーポレートコミュニケーションチームのリーダーを務めています。それと弊社から、「人生の大ベテラン」として創業者HRIフェローの野口 、「子育てと両立しながら働く女性」として清宮 が参加しました。

 

塚田:多くの学生が「大学を出て、大手企業に入って」……といった、ある種「型通り」の就職先を希望するなか、人生の先輩たちと話すことで、実社会における「生きたロールモデル」として、働くことをリアルに感じてもらいたいと思ったのです。将来のビジョンを描くためには、それが必要ですから。

 

 

:場所も和室を設定して、ちゃぶ台を用意して……それこそ、「膝と膝を突き合わせる」距離感で腹を割ることで、その場がどんどん白熱していったんですよね。

 

塚田:最初、学生たちも「和室かぁ」なんてザワザワしてましたけど、かえって率直に話すことができたようです。

 

 

塚田:③の職業体験では、菅沼さんの畑で実際に収穫作業などを体験しました。班に分かれて、それぞれナスとルッコラの収穫やナスの紐かけ作業をしてもらったのですが、そこでは「雑談レベルのコミュニケーションNG」という制約を設けたんです。黙々と作業しながら、「この作業は楽しいか」「この作業はワクワクするか」「もし楽しくないのなら、それはなぜか。どうすれば楽しくなるのか」……と、ひたすら内省するのです。そして、そこから得た気づきをシェアしてもらいました。「ただ収穫するだけではつまらないけど、『誰かが食べてくれる』という想像をしたら、楽しくなってきた」「できなかったことをできるようになるのが楽しいと思えた」など、さまざまな意見が出てきました。

 

:「リアルタイムにコミュニケーションが取れないと、作業が面白くないことに気づいた」と答えた人もいました。そんなふうに、農業という職業体験を通じて、自分が働くうえで何を重要視しているのか、どんな仕事に価値を見出せるのか、どうすればより良く働くことができるのか、実感を伴って理解することができたのです。

 

大切なのは、「Will」だけではなく「Do」で終わること

-プログラムを通して、学生たちにはどのような変化が表れましたか。

 

:みんな、それぞれの学びがあったようですが、「来てよかったね」だけではなく、実際の行動に繋がった学生がほとんどでした。帰りがけに本を買って帰った人もいましたし、すでに内定をもらっている子が、「5年後には会社を辞めて、自分の地元で『農継者』を立ち上げる」と、その日の晩には菅沼さんのところへ泊まっていきました。また、とても引っ込み思案で、「言われたことをただやるだけ」だった学生が、半年後に会ったときはミーティングでも自らの意見を表明し、周囲に良い影響を及ぼせるような人間になっていました。ちゃんと課題に気づき、自分でその解決方法を見出せたんですね。

 

塚田:このプログラムのゴールとして重要視したのが、「Will(こうしたい)で終わるのではなく、Do(こうする)で終わる」ということでした。私自身、業務内外でさまざまなキャリアプランワークショップに参加してきましたが、「これがあるべき未来の姿だ」と漠然としたまま終わるか、「○歳で結婚し、△歳で新規事業立ち上げに携わり、×歳で起業する」……などと詳細に人生プランを書かせるようなものか、両極端なものばかり。これだけ不確実性の高い時代で、そんなプラン通りに行くはずがないんです。方向性だけ示しながら、まずは一歩踏み出し、検証しながら歩んでいけるような指針を持つことが重要です。

 

:そこで必要なのが、自分の「軸」を持つことなんですね。そしてそれだけでなく、ビジョンを定めて、そこへ向かって動くことの重要性に気づくこと。他責でなく自責の中であれば、「今は動かない」と決めてもいい。このプログラムで得た知識や経験、考え方が、学生たちがキャリアを切り拓く原動力となれば、と考えています。

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